ネック折れ リペアレポート Part 3

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その5 整形と生地調整

 補強材の接着が終わったら、形状を整える作業に入る。ここはどちらかというと彫刻家のような仕事になるので、センスが問われる所だ。グリップの形をなるべく変えないように、絶えずノギスやスケールを使いサイズの確認をしながら目指す形状に持って行く。
 そして、塗装前の下地を作りつつ補強材がなるべく目立たなくなるような工夫を重ねていくのだ。

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 当方の補強材の接着面の形状について少し触れておこうと思う。前のページでも確認出来ると思うが、接着面はS 字型のカーブを描くように整形されている。一般的なC型の断面を持つブロックを使うと、弦を張った時にヘッドが僅かに反る事で継ぎ目部分の塗膜に線が入ってしまうからだ。

 この現象を避ける為、ヘッド側の継ぎ目はブロックが少しづつ薄くなっていくようにカーブを反転させているのだ。ただし、接着層が色の変化として目立ってくるが、ベタ塗りのモデルでは関係ないので、基本的にこのS字形状に統一させていただいている。

 一方、グリップ部にこの変化は出ないので、接着層が極力薄く見える方が都合がいい。この点でもやはりS字が良いと思う。

 ウチに限った事ではないが、こういう所にも理由があるものだ。意味無くカタチが決まる事は殆ど無いと言ってよい。

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 これでやっと補強という作業が終了。ここで補強というものの性質について僕の考え方を話しておこうと思う。

 補強とはその字が示す通り、強度を補うもので前よりも強くするというものではないと思っている。あくまで ”補強” であって ”増強” ではないと。増強を目的とするならボリュート(ヘッドからグリップにかけて山状に成型されたもの)を付けるとか、違う材料を使う等の手はあるが、僕は復元にウエイトを置きつつ折れにくい構造、再発防止の工夫をするにとどめたい意向だ。僕には二度と折れないようには出来ない事を白状しておこう。補強付きでも、チューニングされた状態で倒せば折れる確立は以前と大差無いと思う。また、折れやすい訳でもない筈だが。

 言い訳がましいが、この辺での見解の相違は重要なのでご理解願いたい。

その6 塗装

 最後の山場となる塗装作業に入る。ここでのポイントは目隠しと色合わせだ。これまでの作業のほぼ全てに、この塗装段階でこうありたいが為にココはこうしておくといった考えがある。下手するといままでの苦労が水の泡になりかねない所もある最大の難関だ。いや、大げさかも...。

 まぁ、気持ち的には緊張MAXなのには違いない。心して取りかかるとしよう。そんな訳で、作業中の画像はご勘弁を。そんな余裕ないのだ。

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 ここでやってる事はいわゆる目隠し作業だ。いくら補強材に同じマホガニーを使っているとはいえ、削り取った部分と同じ色見や木目が得られる筈もない。不透明色でサンバーストっぽくツブしてしまえば世話ないのだが、それではあんまりなギターだって存在するだろう。

 他人から見て折れた事を判らなくするつもりは毛頭無いのだが、せめて所有者がため息をつかなくて済むレベル(あるかどうか判らんが)に近づきたいのだ。

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 再度目止め。最初の目止めを軽くしておいたのは、ここでの墨入れ効果を高める為だ。塗装後に行う目止めは次に吹く塗料の食いつきを下げそうなので、必要に応じてプライマーなんかも使用したりする。

 一旦は甘ったるい色調になった生地色もここで再び引き締まる。もちろんギラっとした感じは失せてしまうのだが、それは今後の課題となっている。

 ペンによる加筆はこの段階でやる事が多い。今回はヘッド部の継ぎ目に少々という程度。もっともコイツは”ロボット”なので、殆ど基板に隠されてしまうからあまり意味ないのだが.....。

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 色合わせも終了。後はトップコートを残すのみ。生地色の段階で目隠しを終えているので、色合わせは普通のタッチアップと同じ作業といえる。これが不自然さを軽減してくれている。

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 補強材との継ぎ目部分。実物よりデカイ画像でも実物より跡が目立たない。これ写真のマジック?

 正直な所、この画像はかなり継ぎ目が判らないように写ってしまった。実物は見る角度が一定ではないからもう少し判る。

 この画像ではペンによる加筆の程度を見てもらうつもりだったので、”どうです!判んないでしょ?”みたいな下心やフォトレタッチ(論外?)等の小細工は無い。

 何も足さない、何も引かない画像である。

もうここまでくれば一安心。あとはトップコートで塗装工程はおしまい。完成写真はPart4にて。

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