ネック折れ |
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ネックの材にマホガニーを使用しているギターに多いのが、このネックが折れるという症状です。よく”自然に折れた”という声を聞きますが、楽器店での勤務経験から言えば店頭のギターのネックが自然に折れた事は皆無です。大抵の場合、倒したか何かの衝撃が加わらない限りネックはまず折れません。 このネック折れは、弦を緩めてない(チューニングしたままの)状態で倒れると、かなりの確率で発生します。たとえハードケースにしまっておいてもです。逆に弦を緩めておけば回避できる事も多くなりますが、何れにせよ立てかけない事がベストです。 右の写真は修理前と後の物ですが、この割れ方は中央の欠損に加えすぐ右にヒビがある為、要補強となりました。仕上げは木目を活かしつつ、補強跡を極力目立たないようにしてあります。ただ、経年変化(結構すぐなのですが)による塗膜の段差のようなものはご容赦を。 |
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写真 1 補強とは、ヒビ等接着剤を入れる事が出来ない場合に、その部分を取り去って新たに同じ種類の材で元の形に整形する事です。二度と折れなくなる訳ではありません。元の強度に戻る程度にお考えください。 |
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写真 2 ソリッドカラーの仕上がり例。ボリュート付きなので写真 1 と似てますが、こちらは下で紹介しているギター。 |
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写真 3 写真 1の塗装終了後。このギターは3ピースネックだったので、木目をぼかしたフィニッシュに仕上げました。 |
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折れたネックをくっ付ける。言葉にすれば非常にシンプルな作業ですが、そんなに単純ではありません。様々な工程を経て完了に至る訳で、その楽器の状態によってここはどうしようかと選択を強いられる所も有ります。 まず、どう折れたかによって補強(写真 1 参照)が必要かどうかを見極めます。ポイントは、”割れ口が開いているか”と”ヒビや欠損は無いか”。更に”割れ口が閉じるか”。ここまでOKなら大抵接着のみでも実用上差し支えないところまでいけます。逆にこのうち一つでも怪しい所がある場合、補強をお勧めしています。この3つのポイントは接着剤をキチンと使う上での必要条件を確認している訳で、”補強はヤダ”という場合修理そのものが出来ない事もあります。木部に欠損がある場合と口が開いていない場合(接着剤が入れられない)がそうです。 要補強となった場合塗装もしなくてはなりませんが、塗装には 2種類のパターンがあります。一つは木目が出ていないソリッドカラーのもの(写真 2 参照)。白、黒などがメインですが、木目物でもある程度修理痕を隠す事は出来ます(写真 3 )。もう一つは木目をなるべく隠さずに、補強部を目立たなくするシースルーカラーの塗装です。上のチェリーレッドのギターがその例です(写真をクリックすると拡大が見れます)。いわゆる ”パッと見わかんない” 仕上がりですが、物によっては ”かなりわからない” 所まで出来るケースもあります(元の木目による)。 かなり重傷のギターもたまにあります。ヘッドとネックが分離してしまっている物、割れ口がグチャグチャな物、セルバインディングやインレイ等の装飾まで損傷がある物など。どこまで直すかでそれぞれに別途の料金が発生してしまいますが、直らないという事はまずないのでとりあえずご相談ください。 |
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最も重傷だった1本。”自分でやってみたけどダメだった”パターンは過去何件かありましたが、ほとんどの場合接着剤の強度そのものに無理があったようです。エポキシ系の接着剤とか使えば強いんですが、失敗した時に接着剤だけを取り除くのは不可能に近いのでお勧めしません。なるべく元の割れ口を再現しないとヘッドの位置が決まらないので、割れ口をキレイにするのは大事な作業。 |
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古い接着剤を取り除いて初めて再接着が可能になります。このままでは強度的にお話にならないのでこの後表裏両面から補強を入れ、古い接着面は殆ど取り去ってしまいます。 |
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基本料金は5種類ご用意してます。(税込み表示) 1. ヒビ等が無く、割れ口が綺麗に開いている場合。 2. 1.の塗装有りの料金です。 3. 2.同様の内容で、塗装部分が違います。上の写真の様に、極力 4. 欠損、ヒビ等患部を取り除く必要が有る場合。 5. 4.同様の内容で、塗装部分が違います。上の写真の様に、極力 その他 実用面以外の部分や、トップ側からの追加補強については別途お見積もりとなります。 |
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