Curion  Special Order Guitar

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 当工房で製作されるギタ−は今のトコロ”Curion”というオリジナルギターのみです。基本的に修理がメインの工房なので、製作は時間の取れる時だけ。必然、製作予定も何もその時になってみないと判りません。なんともアバウトな製作体制ですが、優先順位というものが有る故、これも致し方ありません。

 そんな中、再び高校時代の友人からいただいたギタ−製作の依頼は、頭の奥の方にしまい込んでいた創意をかき立ててくれるとても嬉しい話しでした。


 前回製作した1号器は基本ストラトスタイルで、2ハムバッキングP.Uにコイルタップを加えたサウンドバリエーション豊富なサーキットを持っていました。その他、フィクスドブリッジやフラットな指板R、ヒールカットにロックペグ等、シンプルながらもその個性はやはりオーダーならではのもの。
 その1号器を経て今回のオーダーは、同じくストラトベースでP.Uも3シングルと一見極普通の雰囲気ですが、リクエストは...

”軽く触れただけでバシッと鳴るギター”


...結構ハードル高いかも..。

 僕もギター小僧の端くれでしたが、どちらかというと弾くよりもイジリ倒す口だったので、こういうプレイヤー思考のイメージは時にハッとさせられます。”細かい事はともかく理想を言うとこんな感じ” みたいな。漠然としているようで実は趣旨が明確というこのひと言。これがスタートでした。

 

 そして実際に出来上がってみると、方向性を明確に持って挑むとこんなにもハッキリと結果に反映させられるのかを改めて思い知らされたギターとなりました。
 

それでは解説していきましょう。

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1. 部材の選出

 今回、最も重要なリクエストは ”軽いタッチでもちゃんと反応する事” だったので、どういう構造でそれをクリアしようか考えた末、まず速い立ち上がりで音を鳴らしてしまう作戦で行く事に。

 そう、まずは鳴らしてしまう事が第一。音の太さやサスティーンについては次のステップで検討するとして、では速い立ち上がりにはどういう要素が必要か?。これは経験から言えば、軽い、硬い等など、音質的には明るく高音域にピークがくる素材が望ましい。つまり耳に届きやすい波長とか周波数というのがありまして、大雑把に言うと柔らかい音よりも鋭い音の方がレスポンスが速く聴こえるという事ね。
 ギタ−の素材で”軽い、硬い”と言えばもうコレしかない。ボディーにはライトアッシュ、ネックはもちろんメイプル。更に今回はメイプル指板というリクエストもあったので、ダブルアクションのロッドを使う関係上、貼りメイプル指板に。

 このままヴィンテージスタイルのストラトを作ったら、かなりカラっとしたウエストコースト系のサウンドになるくらいパキンパキンになりそう。

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 まず左の画像をみていただきたい。キレイな木目のAAクラスのライトウエイトアッシュだが、なんと1ピース...ではなくて3ピースなのである。

 実は"Curion"ではセンター部分にピースの継ぎ目が来ないように、わざわざAAクラスの3ピースを特注しているのだ。

右が木口部分の画像だが、中央のピースは木表と木裏を逆にしてもらった。そう、これは元々1枚板だったのだ。

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 なんでせっかくの1枚板をわざわざ3ピースにするのか?。これは反り対策ですね。
 1枚板だと万一反った時(まあ大抵反ってますが)反りの度合いが大きい傾向があるので、木表、木裏を交互にしてもらう事で反りの程度を薄めようという狙い。

 そしてネック材にもちょっとリクエストを。これはハイエンド系のギターではよく見られるけど、ネックと指板を同じ木から切り出すというか、厚めのネック材を指板用とネック用に切り分けてもらったのだ。こうする事で、両者の収縮率は別々に用意した材よりもかなり近くなるので、経年変化によるネックの歪みを最小限に抑えられる。(実際ネックと指板の収縮差による反りは多いのだ)メイプル1ピースに非常に近い、貼りメイプル指板のネックとも言える。


 因みにこの手法はミュージックマンのUSAモデルで採用されていたと思うが、なんと※G&Lではネック材を縦に割ってロッドを仕込むという奇想天外な方法を採っている。やっぱレオ、ただモンじゃ無い。

 木口の画像を見ていただくと、元々35〜40mm厚くらいだったんじゃないかな。それを5mmと25mmに製材してもらったのが判ると思う。木目がかなり近いので、おそらく分割した際の損失部分は結構少なめ。

 G&L:フェンダー社創設のレオ・フェンダー氏がフェンダー社を手放した後、ミュージックマンを経て作った会社

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2.ボディー部の特徴

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 1号器同様、ノイズ対策は導電塗料によるシールド処理を徹底的に。塗装前の生地の段階で塗ってしまう。塗装後にシールディングでもいいんだけど、万一端子が触れてしまうとトラブルの元なので、塗り込める場合はそうしておりまする。まあ、ストラトはあまり心配ないけど、習慣のようなもの?。

 左の画像は目止め後にサンディングシーラーまで吹いた所。アッシュは導管が大きく目痩せがかなり目立つ材なので、結構神経遣います。ポリ系の下地でガッチリ固めてしまえば随分違うんだけど。

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 ヒールカットは前回よりも大きく取りました。1号器のレポートでは ”削り取りゃいいってもんでもない” と、のたまってますが今回は削り取るよ〜。欲しい結果が違う訳ですから。

 考え方としては、音を太く保ちたいならジョイント部分の面積は大きく取りたいが、今回はそれよりも”軽いタッチ”を優先したいので、グリップの負担を軽くする道をチョイス。ほんの僅かだが厚みも落とし、更に1弦側のカッタウェイも少し深くしている。
 音質的なもの、耐久性、経年変化への適応性といった部分よりも演奏性を最優先にした形状と言えよう。

 左画像は塗装前の仮組み込みの時のもの。ネックはまだ厚みとジョイント角度を決めただけでグリップはこれからの状態。

3.ハードウェア

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 今回はハードウエアにも注目。僕自身も"Curion"の設計時から導入したいと思っていた10.5mmピッチのトレモロユニットが、ようやくGOTOHさんから発売になったのだ。
 sadowskyやsuhrといったハイエンドギターには使われていたものの、パーツとしてはラインナップに無かったので"Curion"では10.8mmピッチを採用していたのだが、その時からこの510シリーズのユニットの音は信頼している。
 オーダーをくれた友人はアームはそんなに使わないとの事なのでベタ付けにセットするから、ほとんど音の為にチョイスしたパーツである。1号器もピッチは10.5mmなので持ち替えた時に違和感が出ないのも好都合だ。

 それにこのユニットはなかなか音が太くしっかりしているので、ウッドマテリアルによる音の軽さの補正をここに委ねようと思っていた。6点止めにスティールブロック、スティールサドル。普通のシンクロナイズドトレモロと比べるとオープンな感じは無くやや鋭いが、落ち着いた低域というか音に安定感が加わる。

 右の画像は支点部分だが、このエッジ!。理屈で言えばこんなにナイフエッジ状になってなくとも用は足りるのだが、やはりこれには妙な説得力がある。さすが、お見事。ただ一つだけ難を言えば、付属のアームバーがやや短いのが気になる。これは発注時に長い物(F3というバー)に変えてもらえるので、ウチではいつもそうしてもらっている。

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 そして、日本製のロックペグとして長い間多くのギターに搭載されてきた”マグナムロック”。今回はそのニューバージョン、フィンガーロックタイプ(スパーゼルとかと同じ方式)の"MG-T"を採用した。特筆すべきはペグポストの高さが3種類から選べる事。通常は1〜3弦用18.5mmと4〜6弦用20mmの2種類なんだけど、発注時にオプションでEX-LONG 21.5mmを6弦用にしてもらった。ナットに掛かる負荷が軽減されてオクターブチューニングの精度が上がる。

 更にもう一つ。最近よく御預かりするRAW VINTAGEのトレモロスプリング。普通のスプリングより弱いので09〜42のゲージでも5本張る事が出来、その上アーム操作してもバーへの負担が少ないという、とても秀逸さを伝えにくいアイテム。

 何と言うかスプリングは多い方が音質的に良いみたい。ユニットからスプリングハンガーへの伝達経路が多いから?...ま、闇雲に増やせば良い訳でもなさそうで、アームを普通に使うプレイヤー向けには4本でセットする事もある。

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 次のページではネック部分の詳細を....

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